ピアノは天然素材(木材、皮革、フェルトなど)と金属でできていますので、温度、湿度の変化の影響を受けやすい楽器です。
エアコンやファンヒーターの風がピアノに直接当たらないように、できるだけピアノから離して設置しましょう。
水平に置くことが大前提です。
キャスターの向きによっても高さが微妙に変わるため、それによりタッチも狂いますのでその点もお気をつけください。
日陰の風通しのよい部屋が理想的です。
また、楽器(ピアノ)を中心に考えた場合、湿度50%程度が良いです。
ホールなどでも、通常50%以下にて保持しているところが多いようです。
室温23~24℃が適温です。(楽器製造にては、測定値を通常23℃を基準にしているようです。)
また、ヨーロッパなどでは、もっと低い室温にて製造されているようです。
急激な温度変化は、結露による金属の錆、チューニングピン・トルクの劣化、低下に繋がります。
(加湿のし過ぎは結露の原因となります。床暖房の上への設置による過乾燥もご注意ください。)
グランドピアノの場合は、エアコンの風が直接当たらないようにするために、市販されているプラスティック製のパネルを置いたり、床暖房の上に設置する場合は、過乾燥を予防するために、断熱シートを敷くなどの対策もおすすめです。
*我々調律師からのおねがい*
アップライトピアノの設置におきましては、ピアノの右側をできるだけ壁から15cm以上開けていただけますと幸いです。
(グランドピアノにおいても多少は開けておいていただけますと幸いです。)
調律の際に右手および肘が当たり、支障をきたす場合がございます。
1つの楽器のもつ音階の全体的な高さを表し、ピアノでいうと中央のドの鍵盤から右側に9番目のラの鍵がその基準になります。
そして約70年ほど前にイギリスの国際会議にて、摂氏20℃時におけるラの鍵の音が一秒間の振動数、440Hz(ヘルツ)時を国際標準ピッチとして定めたようです。
A→441Hzは、A→440Hzより全体的に半音の約4/100高く
A→442Hzは、A→440Hzより約8/100
A→443Hzは、A→440Hzより約11/100高くなります。
ホールの場合は管理者の指定が442Hzの所が多く(たまに443、440Hzを希望する楽団もあり)ジャズ、ポピュラー、スタジオ、ライブハウスは、通常441Hz指定のケースが多いです。
また、最近、オンライン配信に伴い、スタジオなどは、世界標準の440Hzにて指示するケースもある様です。
しかし、ヨーロッパまたオーストリアでは、調律そのものを443Hzでの調律も一般的のようです。
さらに、ピアノが入らない場合は、さらに高いケースもあるようです。
チェンバロの場合は、通常ピッチは415Hzを基準にしております。それは、440Hzより半音低いです。
*ピッチ指定にてご依頼される場合*
調律時の室温と、ピアノ使用時の室温が極端に異なるピッチはズレ、ピッチご指定の意味がなくなります。
従って温度差はできるだけ少ない方がベターですが、許容範囲は3~4度程度では、と思います。
また、冷暖房による作業中での大きな温度変化も、作業後見直しするとはいえあまり好ましいことではありません。
トランペット、トロンボーン、ホルンなど金管楽器は、その材質もあり、演奏中、呼気に依り温まると音程も上がりますが、リコーダーに関しては、金管楽器と材質も異なり、それほど変化はしないようです。
ピアノの様な弦振動の楽器は、材質も伴い下がってきます。
また、マリンバの場合は、音盤(木)により、ピアノ線同様、気温が上がると微妙に膨張し、ピッチが下がり、湿度が上がっても同様でやはり音の伝わりも悪くピッチが下がります。
また、製造も23℃時を基準にしております。
グランドピアノに関しては、グランドピアノの蓋を開けた状態でお弾きになる場合でも、上部は、部屋の空間に音が飛びますが、下部はわずか1mちょっとの床に直接跳ね返るため、ピアノの裏面の支柱にグラスウールやキルティングなどで全面を塞ぐと良いと思います。
ただし、共鳴板は木材が使用されていますので、たまに風通しを良くすることもにもご配慮ください。
本体側板の内側にウレタンなど防音材を置くことも有効的です。この際、接着剤は絶対に使わないようにしてください。
さらなる対策としては、蓋を開け、屋根蓋の下のフレームの上に、同じ様なシート(遮音材、防音材)を平面的に置いて塞ぎます。
また、シートを置くときには、すぐ真下のダンパーには絶対に触れないよう、十分にご注意ください。触れ方によっては故障につながります。
さらなる対策に、ピアノの屋根蓋を閉め、その上に譜面台を置き、お使いいただけると良いと思います。
アップライトピアノの場合は、後面を塞げば同様です。
さらに、必要性に応じてピアノ正面の鍵盤蓋の上パネル(おおよそ幅130㌢×縦45㌢程度)ペダルのすぐ上に立ち上がっている下パネル(おおよそ幅130㌢×縦45㌢程度)を外し、その裏側にグラスウール、ウレタンなどの防音材をその全面に密着させますと、かなり音が小さくなります。
その場合、接着剤の使用は厳禁です。
共鳴箱でもあります。
さらに、ウレタン使用など色々対策はございますが、同時に本来の生ピアノの奏でる音色も減少していくため、我々としては複雑な気持ちでもございます。
上記に関しては、製品化されたものも市販されており、楽器店ピアノ店などでお聞きになっていただくのもよいかと思います。
湿度と温度の影響を受け、木材であるスプルース(針葉樹)の張りと収縮の変化により、弦の張力も変わってきます。
なおかつ、弦自体も湿度と温度との関連性も大変深く、また音程だけではなく、他の箇所の原因も含まれ、タッチの反応も悪くなってきます。
響板は(厚さは一般的に7〜10mm)湿度の変化により張り具合が変わってきます。
主に狂う内容としては、一本一本のユニゾンではなく、特に全体的なピッチの変化とオクターブと和音のバランスが変わってきます。
また、全体のピッチとしても、弦一本あたり80〜90kg、230本以上の弦により構成されているため、20tに及ぶ総張力が構造体にかかっております。
したがって置いておくだけでもピッチがどんどん下がってきます。
金属によって下から弦圧をかけているため、その箇所で錆びついていく可能性もあり、断線におけるリスクも大変伴ってきます。
通常、断線のほとんどの原因はそこの箇所です。
したがって、良い状態を維持するには、定期的な調律ほか点検、調整が必要ではありますが、その期間においては直接ご覧になっている調律師の方にご相談ください。
移動することによって、ずれ、狂う箇所は、主に和音、オクターブのバランスです。これは、度重なる重心の動きによるものです。
したがって、一鍵一鍵から発する音に関しては、さほどのことではございませんので、必要性が有るか否かはお客様のご判断によります。
ただし、稀にアップライトの場合は、間口が狭い場所での移動でも、鍵盤フレーム棚板ごとそっくり外し、設置する場合がございます。
その場合は、きちんと棚板をはめ込んでも必ずアクションの微妙なズレは必ず生じますので、その場できちんと調律というよりむしろアクション全体的な調整が必要でございます。
移動時に調律代も含めて見積もりを出しているピアノ運送さんもよくございますが、それはそれで良いのではないでしょうか。
一番大事なことは、設置する時に、アップライトの場合、垂直水平に置くことが必須です。
多少でも後や前に傾いたりすると、アクションタッチに大きく弊害が生じます。
グランドの場合も、必ず水平に設置することが大事です。
Q5記載の通りに、鍵盤フレーム棚板ごとそっくり外し、さらにコンパクトにする場合は、ピアノ底板に数多く含まれているビスおよび左右のキャスター前面のビスを取り、前土台(ピアノ横板)のビスを外しますとペダルごとそっくり取れます。
そうすると左右カタカナの匕(左右の親板にがっちり接着剤をもって固定してある腕木および左右の妻土台)のみになり、わずか20センチ程度の板のみになります。
通常は、ほとんど、どのような間取りでも対応できます。
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